2017年6月7日水曜日

はり新文庫

●店内廊下に本棚を置きました。名付けて「はり新文庫」、貸出はしておりませんので、お食事の前後に店内でお楽しみください。本の数は少しですが、観光ガイドブックの他に奈良に関する本も御用意しております。今回はその中から少し変わった3冊をご紹介させて頂きます。

 1冊目は『ぼく、ニホンオオカミになる!!』。奈良に関する本棚なのに何で??・・、と思われるかもしれませんが、実はニホンオオカミが最後に捕獲された場所が奈良県東吉野村なのです。この絵本は、ニホンオオカミが最後に捕獲されてから110周年となる2015年、ニホンオオカミと東吉野村を全国に知ってもらえるようにと、東吉野村でオオカミを題材とした手作り絵本コンクールが開催され、その最優秀賞作品として選ばれた絵本です。



 優しいタッチで描かれた絵と温かい気持ちになれるストーリーで、ニホンオオカミに対するイメージが変わりました。少し調べてみると、日本ではオオカミを「大神」とも書き、神のお使い(御眷属)と考えてきたそうですね。オオカミは鹿や猪から田畑を守り森を守ってくれると考え、それが『オオカミ信仰』となり、今でも一部地域では根強く残っているらしい。『オオカミ=悪者』のイメージは、グリム童話などの西洋文化の影響なのかもしれません。(厳密にはニホンオオカミはオオカミの亜種(別種との説もあり)として区別されるそうです)

 東吉野村では、今でもオオカミの遠吠えを聞いたとの話があり、ニホンオオカミは山のどこかにいると信じている人もいらっしゃるそうです。

裏表紙には、東吉野村にある
「ニホンオオカミのブロンズ像」も描かれています




 2冊目にご紹介するのは『平城京のごみ図鑑』。食事処なのに『・・ごみ図鑑』とは申し訳ない題名ですが、これが意外と面白い。発掘調査といえば瓦や土器、そして重要な連絡事項が記された木簡などが対象物と考えていましたが、ごみとして廃棄された木簡などにはメモ、イタズラ書き、愚痴などの記録が残されていて奈良時代の人々の生活が詳しく判るそうです。

「表紙の人物画は、木端に書かれたイタズラ書き?? 
役人が書類を作るふりをして、こっそりと落書きを
楽しんでいたものかも」と。



 この本は、2015年の夏に平城京跡資料館で開催された「平城京"ごみ"ずかん」の内容を踏まえ、書籍として再構成されたもの。出土品には装飾金具、似顔絵を描いた板、魚介類の骨、果物の種子、「鳥食入器」(鳥の餌入れ)と墨書きされた土器なども含まれます。奈良時代の生活が生々しく伝わってきそうな1冊です。


 3冊目は「奈良坊目拙解」。こちらは江戸時代中期、奈良の俳人であり地誌家であり外科医でもあった村井古道がまとめた「奈良坊目拙解」を、昭和52年に喜多野徳俊氏が訳されたものです。現在「奈良町」と呼ばれている旧市街を町別にひとつひとつ丁寧に解説されている大変貴重な本です。



例えば当店の近所に「芝突抜町」という通りがありますが、町の長老達はこの通りのことを「狐辻子」といいます。この本によると『こちらには先年甲冑縅工匠の家があって婦婢等が紡績をするが、一女が非常に顔を粧ったので、時の人が戯れて白狐と云った』とあり、それゆえ「狐辻子」と呼ばれるそうです。この本は本棚ではなく当店事務所に保管しておりますので、読んでみたいと思われる方はお声がけください。

 その他、はり新文庫には『別冊宝島 日本史再検証 蘇我氏とは何か』『別冊宝島 日本史再検証 持統天皇とは何か』『わかる!元興寺』『月刊 大和路ならら』などを御用意しております。今後はよりディープな奈良本を並べたいと考えております。



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