2016年8月18日木曜日

はり新の観光案内  〜 ナント!おいしい!?平城京 〜

●「おかずがまずい」なんて木簡には苦笑いでした。平城京跡資料館(奈良文化財研究所)で奈良時代の食に関する面白い展示を見てきました。小学生向けの展示ですが、大人でも充分に楽しめる展示内容でした。しかも、無料なんですよ!企画展示は8月31日まで。夏休みの自由研究にも最適!



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●平城京跡の北西に奈良文化財研究所(奈文研)の平城京跡資料館があります。こちらの施設は奈文研約50年間の調査結果を一般の人々に解りやすく紹介するために2010年にリニューアルされました。展示は常設展示と企画展示に分かれています。

 全体的に見やすくて分かりやすい様に展示が工夫されていて、奈良時代の文化にあまり興味のない人でも、取り付きやすいのではないでしょうか。大和西大寺駅からは徒歩で10分少しかかりますが、資料館の前にバス停もありので近鉄奈良駅からバスで行く事も可能です。大きな駐車場もあるので自動車で行くのも良いでしょう。

 今回は夏休み企画として「ナント!おいしい!?平城京!! ー奈良の都の食事情ー」と題し「役人も給食を食べていた!?」など、平城京にくらした人々の食に関わるトピックを取り上げた企画展示を見てきました。以下、常設展示の内容と合わせて写真でご紹介させて頂きます。

最初に展示されているのは、平城京から遷都する時のジオラマです。左端は建物を解体しています。
精巧に出来ていて今にも動き出しそう。映画「ナイトミュージアム」の様に真夜中に動き出しそうです。

「再利用できないものはその場に捨てられ、1200年後の発掘で出土することになります」って説明に
ドキドキします。1200年前の職人が "この瓦、いらねぇ!ポイッ" と捨てたものが永い時を経て
現代に掘り起こされるって凄いことじゃないですか。

今、復元されているのは奥に見える大極殿だけです。かつては回廊で取り囲まれた広大な敷地を大極院
と呼び、平城京でも特に重要なエリアだったようです。

奈良時代の役所の想像図です。現代の役所と似てませんか?

当時の役人の机を再現したものだとか。
硯と墨、筆、そして木簡。木簡に書き損じたときに使う小刀など。

食卓風景

当時の貴族階級の暮らしを再現したものです。百貨店の家具売り場にあっても違和感ありま
せんよね。フローリングにベッドなんて、昔の日本とは思えません。

木簡について詳しく説明されています。展示物はレプリカでしょうが、現物を見るのは
初めてなので少し興奮しました。木簡にも大小あり、本当に重要な文章を記録したものから
メモ書き、落書きレベルのものまであり、奈良時代の人々の生活が身近に感じられました。


研究員の机、だそうです
発掘により発見された遺構を保管する技術では、奈文研は世界トップクラス。
写真は、木製の遺構をPEG(ポリエチレングリコール)を用いて保管したサンプルです。
山田寺の東回廊建築部材を保管するのに用いられた技術です。何も保存処理しないサンプルはスカスカの軽い木片になってしまいますが、PEGで保存処理されたサンプルは重みがあり生木に近い感覚でした。
木製の遺構の保存手法のフローチャートです。分かりやすいですね。
ちなみに、高級アルコールとは "値段が高い" ことではありませんよ。
年輪だけで結構、細かな年代までわかるんですね。これには驚かされました。
やはり非破壊検査にはエックス線ですね。
鍍金された耳環のXRFスペクトルです
赤外線を利用した出土品 分析手法の説明です。考古学の展示もここまで来ると「科学博物館」という感じです。考古学というとインディージョンズの様に洞窟に入って文献を読んで謎解きをして・・、って勝手なイメージでしたが、本当の姿は現代科学を駆使されているようです。
出土した丸鞆に付着した黒色物質の赤外スペクトルです。
コンタミネーションもなく綺麗に一致しています。
●以下、企画展示「ナント!おいしい!?平城京」です。

これだけ見ていると、奈文献の仕事って楽しそう〜!って思います

藤原京からは箸はほとんど見つかっていない、平城京からは沢山の箸が見つかったそうです。
箸を使う食生活になると食器も変わりますね、食生活も変わりますね。たった100年の時間差
に大きな変化があったのかもしれません。

当時の朝廷では一日二回の食事が出たとか。資料館では「給食」と表現されていましたが
我々の感覚では「賄い飯」ですね。こちらの木簡は給食に対するアンケートらしいです。
「おかずがまずい」なんて書かれた木簡が1200年も残ってたら、料理人として泣きたいです。


古代のチーズとも考えられる「蘇」に関わる木簡です!



当店でお出ししている「古代チーズ 蘇」は、この「生蘇」にあたります。
ちなみに畿内から納められた蘇は柔らかい「生蘇」が多く、遠方(武蔵など)
から納められた蘇はトコトン水分を蒸発させた固い「精蘇」が多かったそうです。
「精蘇」からは「蘇油」を抽出して儀式などに使われたかもしれませんね。


奈良時代の珍味番付(奈文献による)です。現代の珍味番付でも
充分ランクインしそうな品々です。奈良時代の人も平成の人も嗜好は同じですね。
注目すべきはやはり「蘇」と「氷」!です。

市で売り出される品々については正倉院に記録が残っているそうです。
その内容を見やすく書き出してくれたのがこれです。
いわば、「今日のセール品!!」ってとこでしょうか。

平城京には2カ所の市場があり東市、西市と呼ばれていました。営業時間は正午から日没までで、米、麦、塩、魚、食器、衣類、薬など多彩な品揃えで数万人と想像される平城京住民のニーズに応えていたそうです。これら市の場所は、現在の杏町と近鉄九条駅付近にあたります。

● 簡単に見れば15分ほどで見終える展示内容ですが、私はジックリ納得いくまで館内
 を行ったり来たいしたので1時間以上は楽しめました。資料館は月曜日が定休日です。展
 示内容や開館時間などは奈良文化財研究所 平城京跡資料館 HP にてご確認ください。





2016年8月13日土曜日

はり新の周辺観光案内 〜  生駒聖天さん  〜

石造りの一の鳥居
●生駒山にある宝山寺は、日本三大聖天のひとつに数えられ、商売の神として奈良や大阪商人の信仰を集めてきました。定休日を利用して8月1日(朔日参り)にお参りして来ましたので、少しご紹介させて頂きます。商人が集う独特の雰囲気が素晴らしい!


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宝山寺とは・・
●奈良県と大阪府の県境にある生駒山。この生駒山の中腹に位置する宝山寺は、商売の神様を祀る日本三大聖天のひとつに数えられ、現世利益を求める人々が集う信仰のお寺として古くから栄えてきました。
 
 お寺なのに鳥居があるのは天部の神様を祀っているためで、宝山寺では鎮守神として歓喜天(聖天)をお祀りしています。毎月1,16日は「歓喜天ご縁日」として商売繁盛などの現世利益を祈願する人々が数多く参拝するそうです。(「ますます訪ねたくなる奈良」HP参照)



左へ進むと「暗峠」へ
 今回はケーブルカーを使わずに参道を歩いて登ることにしました。上り坂と階段が続く参道を20分ほど登れば石造りの「一の鳥居」が出迎えてくれます。真夏の太陽の下、参道を登ると汗びっしょりになりましたが、左右に燈籠が立ち並び石畳の奥に石の大鳥居が見えると清々しい気持ちになります。
「金壱億円」って凄いですね

不動明王像が祀られている本堂


大鳥居の横には駐車場があります。こちらに高級車が並んでいたり、「永代浴油 壱億円」なんていう石碑が立っていたりして少し驚かされます。

 境内は沢山の参拝者で賑わっていました。手にお線香の束を握ってどの人もどの人も手慣れた仕草で礼拝を捧げています。人目を気にせずに一心不乱に参拝するひともチラホラと。聖天堂の前にも鳥居があり、巾着型の香炉があり、雅楽が聞こえてきたり、神仏習合の世界観を色濃く残しています。

 歓喜天さんが持つ巾着を摸しています

奈良公園周辺の観光スポットと違い、朔日参りの宝山寺は商人たちの聖地という雰囲気です。ブログでは上手く伝えきれない独特の雰囲気があるので、一度参拝されることをお勧めします。

 帰り道も歩いて下る予定でしたが、暑さでくじけてしまいました。日本最古のケーブルカーで帰路につきました。


聖天堂の前にも鳥居
奥の院に向かう階段からの景色
異国のお寺の雰囲気がしませんか
奥の院へ向かいます
奥の院への階段には滑り止めの加工が
施されていました。細やかな気配りですね。
奥の院本堂
帰り道で参道を振り返ってみました
参道の先に奈良市街がみえます
ケーブルカー「ミケ号」




















2016年8月10日水曜日

はり新の観光案内(ツバメの塒入り@平城京跡)

●「ツバメの塒(ねぐら)入り」をご存じですか。この時期だけ、4万羽のツバメが飛び交う様を見る事ができると聞いて平城京跡の第一次大極殿まで行ってきました。(あまりよい画質ではありませんが、動画に記録してみました → YouTubeツバメの塒入り


第一次大極殿
●市街地で子育てをしていたツバメも、8月初旬には全て巣立っていきます。今年は、当店の軒先でも2回に分けて合計9羽の雛鳥が巣立っていきました。子育てを終えた親ツバメや巣立ったあとのツバメは、他の仲間たちと一緒に河川敷や池、沼地のヨシ原などに集まり塒(ねぐら)をつくるようになるそうです。日が沈む頃になると数千、数万羽のツバメの大群が舞い飛び、一斉に舞い降りて眠る壮観な眺めを観察できるとか(→日本野鳥の会HPより)。この風景を一度見てみたいと思い、先日平城京跡まで行ってきました。

ツバメの塒入りには早すぎる時間に平城京跡に着いたので大極殿の周囲を散策してみました。第一次大極殿は朱雀門の真北約800mに位置し正面約44m、側面約20m、高さ約27mもあり平城京最大の宮殿です。天皇の即位式や外国使節などの面会など、国のもっとも重要な儀式のために使われていたそうです。
正面から見た大極殿

「第一次」と付くのは実は大極殿は二つあって、その最初の大極殿という意味です。740年に恭仁京への遷都時に新都へ移築された後、再び平城京へ戻ってきた時には少し東側に第二次大極殿が新築されました。今は、この第二次大極殿の基壇だけが復元されています。

南には朱雀門が見えます

 さて、日没時刻になると少しずつツバメが大極殿近くにあるヨシ原の上空に集まってきました。最初は2~3羽ずつ集合、という感じでしたがいつのまにか四方八方から数十〜100羽以上はいそうな黒い点の集団が高い鳴き声と共に集まってきます。10分もすれば上空はツバメに覆われてしまいます。
黒い点が全てツバメ
ツバメは群れを作らないので揃って飛行することはありません。個々がバラバラに、好き勝手に飛んでいる様に見えますが、飛翔力の高い鳥なので見ていて飽きませんね。集合から15分間ほどヨシ原の上空を飛び交った後、少しずつ低空飛行するツバメが現れてヨシ原に入っていきます。残念ながら、私のカメラでは暗い中でスピードのあるツバメを捉えきることはできませんでした。ツバメの塒入りは気候次第では9月上旬まで見ることが出来るとか。これも季節の風物詩ですね。機会があれば一度、ツバメの塒入りを御覧になってください。ツバメは暫くの間、この平城京跡で過ごし、充分に栄養を蓄えたツバメから南の国に飛んでいくそうです。

 帰り際にみた、ライトアップされた大極殿はとても綺麗でした。