国営飛鳥歴史公園に含まれるキトラ古墳壁画体験館四神の館。地上階で実物の壁画を展示、地階が無料の展示スペースです。近鉄飛鳥駅から徒歩25分ほどかかりますが、壺阪山駅からだと徒歩15分ほどの距離です。当店からは車で1時間ほどの距離。 |
1983年、ファイバースコープ調査によりキトラ古墳石室内壁に描かれた壁画が発見されました。奈良県内では結構大きなニュースになったと記憶しています。その後の調査で石室内には四神(青龍、朱雀、白龍、玄武)、十二支、天文図、日月の壁画が発見されました。四神の図像がすべて揃う古代壁画は日本ではキトラ古墳だけ、天井に描かれた天文図は現存する最古の本格的天文図として有名です。
しかし、もともと壁画を描いた漆喰層が剥がれ落ちそうな危険な状態である上に、発掘による石室内環境の激変により壁画にカビが発生して緊急に対処する必要がありました。遺跡は現地保存が原則のようですが、キトラ古墳に関しては例外として奈良文化財研究所が中心となり、新たな技術の導入など試行錯誤の結果、無事に壁画を取り出し最適な状態で保存することに成功したそうです。
展示スタッフの説明では、湿度約100%の 石室内にさらされた漆喰は生クリームのような 状態だったそうです |
写真では見えにくいですが手前にあるのがダイヤモンドワイヤーソー。もともと採石場の岩盤や建設現場の鉄筋コンクリートを切断するのに使用されるものです。 |
そのような理由で展示スペースの一部分は壁画の取り外しと保存のための記録展示となっています。壁画取り外しの前処理、ダイヤモンドワイヤーソーなど異分野の機材を転用して漆喰層の剥離、テラヘルツ波を用いた壁画と漆喰層のスキャニングなど失敗の許されない状況下で少しずつ作業は進められたのがわかります。展示を見ていると壁画のことをもっと知りたくなりました。壁画に使用されている色材の分析手法と結果など、壁画そのものについての研究結果も展示して欲しいと思いました。
現代の科学技術が古代遺産の保存・研究に役立っていることに知り素直に嬉しくなりました。壁画を描いたのが渡来人一族であったとの研究結果も展示されていましたが、それはまた別の機会にご紹介させていただきます。
●(キトラ古墳と高松塚古墳壁画の色材(顔料)についての研究資料をインターネットで見つけました。興味のある方はどうぞ → キトラ古墳壁画の顔料について)
キトラ古墳の石室は二上山から運ばれた凝灰岩で作られていますが、この凝灰岩の上に漆喰が塗られています。漆喰を塗る前と塗った後の違いを実際に触れて確かめることができます。漆喰表面は綺麗な淡黄白色ですべすべした手触りなので、これなら繊細な絵を描くこともできそうです。 |
キトラ古墳は丘陵の南側に作られた二段築造りの円墳。外観はまるで麦藁帽子かUFOの様です。キトラ古墳は終末期古墳(7世紀末〜8世紀初頃)と考えられ、この時代はすでに「薄葬化」の時代です。古墳の規模も小さく内容も簡素になり棺も石棺から木棺へ変わります。副葬品も内容量が少なくなります。 |
展示室入り口すぐ左側に実物大の石室を再現したものがありました。今にも崩れそうな東側壁面もリアルに再現されています。高さ1.2m、幅1.0m、奥行2.4m、思ってた以上に狭い印象。狭い石室内で壁画を描くのも大変な作業だったと思いますが、壁画を剥がした現代の技術者も大変だったことでしょう。 |
高松塚古墳との違いを表にしてありました |
壁画と並んでキトラ古墳で素晴らしいところは天井に描かれた天文図、 これはその天文図をイメージ化したもの。キトラ古墳の天文図は、現存する最古の本格的天文図と言われます。 |
こちらは、今回特別公開された北壁「玄武」をデジタルアーカイブスキャニングで 取り込んだもの。モニター上で最大56.2倍まで拡大して見ることができます。 |
青龍の画像 |
白虎の画像 |
シアタールームでは「発見!キトラ古墳」「飛鳥の歴史的風土の保全」 「渡来人がもたらした飛鳥文化」の3本の映像を観ることができます。 短くまとめられていてわかりやすかったですよ。 |
壁画公開は事前予約制であったり、直前に警備員さんからの注意事項の読み上げがあったりと 少し堅苦しい部分もありましたが、入り口にはこんなゆる〜い掲示もありました。 |
こちらが本物のキトラ古墳。新たに二上山から 切り出された二枚の凝灰岩で石室入り口は閉じられ、 埋葬当時に近い状態で保存されています。 |
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